記事一覧

2016年ワールド・ミュージック・ベスト・アルバム【第1位〜4位】

第4位 Inul Daratista 『The Best of Inul』 KFC (インドネシア)

ph04_inul.jpg

 10年以上前に〝ゴヤン〟といわれる激しい腰振りダンスでセンセーションを巻き起こしたインドネシアの歌姫イヌル・ダラティスタ

 この秋、仕事で大阪に出張した折、心斎橋のプランテーションで手に入れた。ベスト・アルバムとあるが、ここ3年ぐらいの曲のようだ。

 レーベルはなんとケンタッキーフライドチキン! 現地買付に行った店主の丸橋さんによると、インドネシアではレコード店が次々となくなってしまったために、KFCの店頭でCDを扱うようになったとか。ただし、フライドチキンとのセットでしか販売していないため、よっぽどフライドチキン好きの日本人と思われたらしい。

 イヌルが歌うダンドゥットは、もともとはアラビックなマレーの大衆歌謡ムラーユ音楽とインドのフィルム・ソングなどが混血して生まれた労働者階級向けのポピュラー音楽だった。
 スリン(竹笛)やグンダン(太鼓)が入る意外にも正統派サウンドだった当時と比べると、グンダンの激しいリズム、派手なエレキ・ギターとプログラミングで彩られたよりスピーディーなダンス・サウンドになった。
 
 荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」と重なる80年代のベタな歌謡ディスコ調サウンドがいい。ひさびさにイヌルの歌を聴いたが、かつてのしなを作る歌い口は弱まったものの、ダンス同様、キレの鋭いパンチ力は健在で元気が出てくる。
 
 ちなみに『Dangdut Telaris』 というイヌルを含む8人の女性歌手の10曲を収めたKFC特製のコンピ盤も同時購入した。
 正統派からEDM系まで、どれもキュートでちょっといかがわしくて言うことない。「Sakura」というタイトルの曲も入っているし、目新しさではこちらが上かな。ちなみに、この中に入っているDewi Perssikは最近「Pokemon」という曲を発表している。

ph04_dangdut_terlaris.jpg







 ブログをアップ後、プランテーションの丸橋さんからメールをいただきました。
 それによると、KTCではCD単独でも購入できるそうです。ただし、フライドチキンとセット購入だと割引になったとのこと。現在はセット割引はなしだとか。おわびして訂正させていただきます。



第3位 Kyekyeku 『Higher Life on Palmwine』 (no label) (ガーナ)

ph03_kyekyeku.jpg


 年末に渋谷のエル・スールオリヴァー・ムトゥクジなどといっしょに通販で購入。だから、まだあまり聴き込めていないがすてきな音楽だ。

 今日、恒例の年間ベスト・アルバムを特集した『ミュージック・マガジン』最新号が届いたので、見てみるとワールド・ミュージック部門の第1位に本作が選ばれていた。「そんなにスゴイのか?」と改めて聴き直してみる。

 Kyekyekuと書いてチェチェクと読むらしい。アフリカ最古のポピュラー音楽といわれるパームワイン・ミュージックの期待の新星だそうだ。
 1曲目はパームワインの重鎮コオ・ニモとのデュエット。アクースティック・ギターと簡単なパーカッションという通常の編成に、なんとインドの打楽器タブラが入っていたのには意表を突かれた。

 最初の曲はコオ・ニモの存在感が大きすぎたが、2曲目以降はチェチェクのフォーキーなセンスが生きたさわやかなパームワイン・ソングが続く。
 ホーンズが加わったルンバっぽい曲も、エレキ・ギターやキーボードが加わったハイライフっぽい曲も、アクースティック・ギターのアンサンブルを生かしたゴンチチ風?インスト曲も、暑苦しさはまったくなく、現代的なセンスにあふれていて、じつに心地よい。

 ボーナス・トラックのライヴは、なんと都会的でおしゃれなジャズ・スタイル。なんでもフェラ・クティの作品のカヴァーだそうだ。全然気づかなかった。

 これは夏のレースに持って来いだな。


この曲はアルバムに入っていません。参考です。



第2位 Oliver Mtukudzi 『Eheka! Nhai Yahwe』 Tuku Music (ジンバブウェ)

ph02_mtukudzi_eheka.jpg

 アフリカ南部にあるジンバブウェ出身、御年64歳の大ヴェテラン、オリヴァー・ムトゥクジの65枚目の新作。

 以前、このブログでも取り上げたが、私はムトゥクジのしゃがれた包容力のある声が大好きで、日頃のトレーニングでもレースでもよく聴いている。

 まったく肩に力が入っていないし、力強いのにとてもソフトだし、リズムやアンサンブルは複雑なのにシンプルに感じさせる力量はスゴイとしか言いようがない。こんなに慈愛にあふれていて温かく包み込んでくれる声の持ち主はそんなにいないと思う。

 本作でもムトゥクジ・サウンドはいつもとまったく変わらず好調そのもの。目新しいところでは、南アを代表するヴェテラン・トランペット奏者ヒュー・マセケラが2曲でさわやかなフリューゲルホーンを聞かせてくれたり、奥さんのデイジーとの仲むつまじいデュエットが聞けることか。





第1位 Rokia Traore 『Ne So』 Nonesuch (マリ)

ph01_rokia.jpg

 ロキア・トラオレは西アフリカのマリ出身、パリを拠点に活動する女性シンガー・ソングライター。
 エレキ・ギター、ベース、ドラムスに、ンゴニという三味線に似た音色の伝統弦楽器を加えた程度のシンプルでミニマルなアクースティック風の編成で臨む。ロキアは、世襲芸能民ジェリ(グリオ)の力強く朗々とした歌いっぷりとは好対照の、ハスキーな声でクールに切々と歌う。
 
 プロデュースは13年の前作"Beautiful Africa" に続いて、PJ・ハーヴェイとのコラボで知られるジョン・パリッシュ
 ビリー・ホリデイ「奇妙な果実」のリメイク以外の10曲はロキアのオリジナルで、紛争や迫害により故郷を追われた5500万人を超える難民たちのことなど、平和と愛を訴えたメッセージ・ソングが多くをしめる。

 歌も演奏もますますぜい肉がそぎ落とされて、もはや〈わび〉〈さび〉の味わいといっていい。
 そのせいか、私は冬になるとロキアを聴きたくなる。いつぞや、2月の朝、雪がしんしんと降る冬枯れの寂しい緑道を独り走っているとき、ロキアの歌が聞こえてきて心にじーんと来た。私の中では、ロキアの歌は長谷川等伯の有名な水墨画「松林図」に近い。

ph01_syorinzu.jpg

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

tpokjazz

Author:tpokjazz
月平均走行距離200〜300kmの早朝型フォアフット・ランナー。好きな音楽は、ワールド・ミュージック、ロック、ジャズ、ソウル、ファンク、Jポップなど、ディープでコアな音楽全般。

最新コメント