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2016年ワールド・ミュージック・ベスト・アルバム【第5位〜7位】

第7位 Aymee Nuviola 『El Regreso ala Habana』 Valorty (キューバ/USA)

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 キューバを代表する歌姫セリア・クルース。50年代、ラ・ソノーラ・マタンセーラの看板歌手として活躍し、キューバ革命で米国へ移住したのちは〝サルサの女王〟としてNYラテン音楽界に君臨した。
 チャーミングなアイドルだったセリアも晩年はド派手な〝ガングロの京唄子〟と化した。私が通っているスポーツ・クラブに日中、顔を出すと、この手の強烈なおばさんたちが見事な二の腕とだぶついたおなかをブルブル震わせながらズンバを踊っている。

 セリアが世を去って早くも13年。本作は、セリアと同じく故郷キューバを離れ、現在はマイアミを拠点に活動する実力派歌手アイメー・ヌビオラが、セリア晩年のアルバムをプロデュースしたサルサ界の大物プロデューサー、セルジオ・ジョージと組んでハバナでレコーディングしたセリア・トリビュート・アルバムである。

 本作発売をきっかけにセリアのことを思い出してもらえればと感じ、『ミュージック・マガジン』編集部にお願いして輸入盤紹介させていただいた。

 〝ガラチェーラ(ガラーチャの歌い手)〟の愛称で親しまれていたキューバ時代の軽快でユーモラスなガラーチャ、70年代、チャーリー・パルミエリジョニー・パチェーコウィリー・コロンなど、NYラテン・シーンのキーマンたちと共演したホットなサルサやしっとりしたボレーロ(ティンバル王、ティト・プエンテ楽団との共演曲は選ばれていない)、セルジオ・ジョージのプロデュース曲を含む晩年のダンサブルなラテン・ポップまで、セリアの歩みが見て取れる代表曲11曲をリメイク。
 
 米国とキューバの混成チームによるジャジーで迫力ある演奏をバックに、アイメーは、まるでセリアがよみがえったような、巻き舌を生かしながら太くてハスキーな声質でリズム感抜群に堂々と歌いこなしている。
 私は本作の収録曲とセリアのオリジナルと代わり番こに並べて聴くことが多いのだが、曲によっては完成度でオリジナルに引けを取っていない。





第6位 uKanDanZ 『Awo』 メタ・カンパニー (エチオピア/フランス)

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 ハイレ・セラシエ皇帝が統治していた70年代前半に黄金時代を迎えたエチオピアのポピュラー音楽は、90年代からフランスのレーベル、ブダの手によりエチオピアン・グルーヴとして次々と復刻されるようになった。

 これらの音楽に衝撃を受けて模倣するようになったヨーロッパやアメリカなど、外国のミュージシャンたちは〝フェレンジ〟と呼ばれ、現在のエチオピアン・グルーヴはかれらが牽引しているといっても過言ではない。
 
 その代表といえるのがユーカンダンツだ。フリージャズ〜パンクのフィールドで活動していたエレキ・ギターのダミアン・クリュゼルを中心とする4人のフランス人ミュージシャンに、エチオピア出身の歌手アスナケ・ゲブレイエスが加わり2010年に結成された。

 本作は4年ぶりのセカンド・アルバム。エチオピア音楽らしいペンタトニックのメロディーに乗せてコブシを目一杯利かせたアスナケの歌と、ダミアンらの超ド級のヘヴィーでラウドなサウンドとのスリリングな取り合わせはますます好調。メタル期のキング・クリムゾンを思わせるアグレッシブなサウンドにボルテージが上がる。

 本作には〈エチオピーク・シリーズ〉でおなじみの名歌手トラフン・ゼケケの曲を中心に6曲収録。アルバム最後の12分近くに及ぶかれら初のオリジナル・ナンバーも力作だ。





第5位 『URGENT JUMPING! East African Musiki Wa Dansi Classics』(2CDs) ライス (ケニア/タンザニア)

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 ロンドンにあるアフリカ音楽の老舗レーベル、スターンズ発売によるひさびさの新作は、東アフリカのケニアとタンザニアで70〜80年代にヒットしたポピュラー音楽をコンパイルした2枚組。

 本作の大半をしめるのは50年代に中央アフリカのコンゴで生まれたポピュラー音楽ルンバ・コンゴレーズだ。60年代以降、コンゴ国内の政情不安から数多くのミュージシャンが東アフリカに流入した。その結果、ケニアとタンザニアは本家に負けないルンバ人気地域になった。

 故・中村とうよう氏などはこれら東アフリカ産のルンバをまがいもの扱いしていたが、近年になって再評価する動きが出てきた。本作はそうした流れの成果を示した好編集盤といえると思う。

 東アフリカ産のルンバの特徴は、スワヒリ語で歌われることが多いのと、本家と比べてテンポが速く音が乾いているという点がまず挙げられる。楽曲の構成も演奏能力も本場にけっして引けを取っていない。

 なお、本作にはルンバのほかに、ルオ人のベンガ・ビートアフロビートセネガル風ラテンなども聞かれ、当時のケニアやタンザニアの人びとの旺盛な吸収力を示している。

 乾いた音色のギター・アンサンブルによる執拗な反復と唸るベースとの絡みが、同じくリズミカルな反復からなるランニング動作とすこぶる相性がいい。もともとは『レコード・コレクターズ』の新作レビューに依頼されたものだったが、10月の四万十川ウルトラマラソンでは世話になった。

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Author:tpokjazz
月平均走行距離200〜300kmの早朝型フォアフット・ランナー。好きな音楽は、ワールド・ミュージック、ロック、ジャズ、ソウル、ファンク、Jポップなど、ディープでコアな音楽全般。

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