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脱力ランにレゲエはどう?:ボブ・マーリー・ベスト・ソングズ10【4】

「Positive Vibration」−「身心脱落」のフィーリング

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76年発表のメジャー5作目『ラスタマン・ヴァイブレーション』(Rastaman Vibration)冒頭収録曲。

ボブ・マーリーがラスタファリズムに傾倒していたことは音楽ファンのよく知るところだ。

ラスタファリズム(ラスタファリ運動)とは、30年、エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ1世が戴冠した際、「アフリカ回帰」を唱えたジャマイカ出身の黒人民族主義指導者マーカス・ガーヴェイの予言が的中したと信じ、黒人の救世主として崇拝した、ある種のキリスト教的な千年王国運動である。

千年王国は社会不安が高まり混乱しているときに、この世において実現される共同体的なユートピアである。

愛と平和と平等を説き、自然のリズムとの調和を重んずるラスタファリズムにおいて、万物は本質的に同一であり、私と他者とのあいだに区別は存在しない。

だから「You & I」ではなく、「Us」でもなく、「I & I」といういい方をする。「私」=主体と「あなた」=対象の関係ではなく、といって「我々」に統合されるでもなく、神、Jah(ジャー)の下では「私」と「私」が平等に併存すると理解したい。

だとしたら、日本における一揆にも通じる千年王国的ラディカリズムといえるかもしれない。

「Positive Vibration」「I & Iのポジティヴな気持ちで助け合い分かち合えればもっと楽になれるのに」という内容の歌。「ポジティヴな愛のヴァイブレーション」とは、なんて素敵な響きだろう。

愛の波動とはハートビート(心臓の鼓動)。これこそラスタ・ミュージック、すなわちレゲエの本質である。そして、ハートビートはランを司る。だから両者は響き合う(ヴァイヴする)。

私には「I & I」の意味がいまひとつスッキリしないのだけれども、ランナーズ・ハイにおいて、「私」がなくなり「万物斉同」が実感できること、禅宗でいう「身心脱落」(しんじんだつらく)、いわばJahに包摂されることに至福を味わうという点では相通じるところがある。

ところで、「Positive Vibration」では、シンセサイザーなどのデジタル・サウンドが大きく取り入れられ、それまでのレゲエにはなかったテクノっぽい感覚が打ち出されている。

私には民俗音楽的なエッセンスを最新のテクノロジーに取り込んだトーキング・ヘッズのニュー・ウェーヴ感覚を先取りしていたようにも聞こえるのだが、どうだろうか?

なにもかも達観したかのような嘲笑的な態度、シニシズムがはびこる現在だからこそ、私はポジティヴに、楽観的に生きたいと願う。

「自然といふは、もとよりしからしむると言ふ言葉なり。」(親鸞)



(続く)

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プロフィール

tpokjazz

Author:tpokjazz
50歳から走り始め、月平均走行距離200〜300kmの早朝型フォアフット・ランナー。フル・ベスト3時間33分20秒。ウルトラもやっています。好きな音楽は、ワールド・ミュージック、ロック、ジャズ、ソウル、ファンク、Jポップなど、ディープでコアな音楽全般。

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